2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『空を飛んだ七兵衛』言葉の展覧会1458

生まれてからこのかた 空ばっかり眺めとった七兵衛は みんなから馬鹿にされていた そやけど七兵衛は全くそんなことは気にかけなんだ だもんで参拾年目に空を飛べるようになった みんなは羨ましがった やがて七兵衛を尊敬するようにまでなったと もう地上には…

『一瞬の』言葉の展覧会1457

曇天の下で 洗濯物を干していた そのとき、灰色雲の間から サッと、一条の光が射した 辺りは急に明るくなった 手に持っていたシャツは真っ白に輝く まばゆい光景 が、またたくまにまた元の曇天に戻った この一瞬の 隠された輝き ○

『瓦礫の中の』言葉の展覧会1456

死んでいった人たちと 生き残った人たちとの 間が 遠ざかる 瓦礫は未だに草が生い茂った更地で 小高い山となっている その中に埋もれた人形 じっと 黙ったまま 言葉が発見する 時を待って ▲ ・

『落とし穴』言葉の展覧会1455

美しく飾った門がある 大勢のものが勇ましい言葉をかけられて門をくぐる 何者かに誘導され、あの岩に敵意を丸出しにして 大声をあげ右へ右へ旋回して進んで行くと 誰かが灯りをともして、ほら、この穴だよ 落ちなさい、と強い口調で言う 何者かはもったいぶ…

『心に引っ付いた言葉』言葉の展覧会1454

どこかで見つけた言葉だが どこだったか思い出せない 街角だったか 劇場だったか、本の中だったか あるいは出逢った誰かさんの・・・ あの言葉が気になっている 「いろいろあったけど あー、人生楽しかったよ ーーこれが死ぬ前においらの言う言葉だよ どんな…

『都会に浮かぶ舟』言葉の展覧会1453

夜の都会に 舟が 浮かぶ 時空のしじまに 舟が浮かぶ 秋の夜 フクシマの舟は ハンシンアワジの 「生」の前に 高く 高くかかげられた 出合いと問いかけと 祈りのために ▲ ■ ● ■船坂ビエンナーレと連携して(『宝塚現代美術てん・てん・てん』2012)『ふね、や…

『ふね、ふねに出逢う』言葉の展覧会1452

フクシマの藤城ひかりさんと トチアキタイヨウさんらは 西宮浜で流れ着いた流木を拾い集めて 舟をつくった 7メートルの重たい舟だ それを担いでえべっさんに参り 武庫川を上る 舟はずしりと肩に食い込む 足がもつれる 舟は武庫川を上流へ上流へと上って行っ…

『言葉は世界を』言葉の展覧会1451

言葉は世界を誤らせる 言葉は世界を壊す 言葉は世界を抉る 言葉は世界を見直す 言葉は世界を構築する 言葉は世界を再びつくる 言葉には世界を動かすエネルギーがある ● ●

『そっぽを向く詩』言葉の展覧会1450

みんなが そうだそうだと言うとき 詩はそっぽを向く みんながそっぽを向いたとき 詩は そっと みずからをなぐさめる ・

『困ったヒト』言葉の展覧会1449

困ったものだ ヒトのなかには恐ろしくおぞましい個も混じっている 困ったものだ ヒトをいじめる個 ヒトを踏み台にする個 ヒトを気まぐれに殺す個 ヒトを滅ぼそうとする個 困ったものだ こんな種の生き物を宇宙はつくってしまったんだな いずれは絶滅するのだ…

『ツッコミからボケへ』言葉の展覧会1448

この列島のムラでは、ここ何年間か みんな病にかかっているようです 「ツッコミ病」という病です 他人を先取攻撃してみんながみんな 「面白い人でいたい」ツッコミ病です この病はお笑いバラエティの特有な臭いがします テレビ画面にも職場にも会話にも宴会…

『元に戻りつつある人口』言葉の展覧会1447

人口が減ろうとしているのではない 元に戻ろうとしているのだ 世界に後れをとるのじゃない 世界の先進地なのだ 長い間一定していた人口が 現在だけが突出してしまった たった百年くらいで 減ろうとしているのでは決してない 増殖しすぎたので自然に調整され…

『詩は私のものだ』言葉の展覧会1446

詩は私のものだ 詩はきわめて個人のもの 詩は気まぐれ 詩は他の死んだ言葉に比べ生き生きしている 詩は雑で荒くぶっきらぼう 新しいものが生成してくるようだ 新しい言葉をもつ人は理解されにくい 一般にはほとんど目に入らない 詩は分からないと言われる で…

『秋雨』言葉の展覧会1445

久方ぶりの秋雨 海に降り 高波の飛沫が灰色雲を突く 遠くの方で台風が進んでいるらしい 秋の雨、陸に降る 降ったり止んだり どこかで、傘のなかに二人が入る またどこかで、ぐったり項垂れていた 花が活き生きしてきた : : : : : : : : : : : : : : : :

『できる!!』言葉の展覧会1444

いま、こんなに悩んで 苦しんでいるけれど こんなのはいつか必ず解放される ・・ 苦労の最中に フッと脳裏に浮かびあがるものがある おお、ヤッタネ とうとう乗り越えられた 成功だ そんな喜び満面の自分が浮かんでくる ・・ これはもう抜け出られたようなも…

『石舟』言葉の展覧会1443

石ころごろごろの 河原で、子どもにもどって オオノさんと二人で ただもくもくと石を積む 汗が噴出してきたので 少しいっぷくぼくらは石舟に乗って上流の谷川を上り でこぼこ山を昇り 雲を過って空を飛ぶ 子舟を連れた時空の石舟 オオノさんはおっと、おどろ…

『がらんどうの小屋』言葉の展覧会1442

まことに爽快だ そこにあるのではない そこに何もないのである 飾りもの、華麗なもの 必要なものが 全くない 大きなもの、強がっているもの 高次しているものなど すっかりない小屋のなかは 欲望の跡方が消え、匂いも記憶も消えた 少しあたたかいがらんどう …

『詩ー生きる芯』言葉の展覧会1441

はたっ、と 曲が途絶えた歌 伴奏が無くなり メロディが消えリズムも消え 言葉だけが浮き立つと やがて言葉は行き場を失って 遠く彼方へ放り出される はたっ、と止まった思考 詩のような言葉が遠ざけられているこのムラでは 詩の言葉はいらつくもの、余分で邪…

『金木犀の香り』言葉の展覧会1440

昼、とぼとぼ歩いていると もわ〜っと 夜、外に出ると ほわ〜っと キンモクセイの香りが漂ってきた ほんの一瞬、えもいわれぬよい香りにぼくはつつまれる ささやかな秋の このなんともいえない金木犀の甘い匂いは 宇宙に僅か漂う幸せの香りだ それを感じるこ…

『だらだら詩を書く』言葉の展覧会1439

いつもだらだらと詩を書く 詩を駄目にするために たらたらと字を書き殴る もうすでに熱き言葉が枯渇しているみたい でも毎日書くように努めていると 日常のなかで ときには思いがけなく 熱々の言葉を発見する ・

『コスモスの影』言葉の展覧会1438

秋の陽が花びらを透いている 秋の光が花びらに影をつくる 花の世界はじつにあどけない 美とはあどけなさなのか ただお陽さまに守られて笑ってる コスモスたちの中に入って じっとぼくは花びらに映る影絵を見ている

『ミツバチも花も』言葉の展覧会1437

秋晴れのとても穏やかな天気が続きます ぶーん ぶーん ミツバチが飛び交っています しろ、ぴんく、くれないのコスモスの花々が 甘い蜜をプレゼントすると 揺れるのです ミツバチも花も 喜びが 陽をいっぱい浴びて ●

『「再」「生」』言葉の展覧会1436

風雨によって彫刻された こんなに面白く 自然の作った素敵な作品 蓬莱峡 その麓 流されてきた土や砂 石ころをちょっと借りて作る 「再」 武庫川への入り口河原の石船に乗って 少し下流の宝塚にある中州 「生」 に辿り着く 再生だ!! しかしこれらもやがて大…

『蓬莱峡』言葉の展覧会1435

炎のような 仏さんのような 奇怪な岩肌が 剥き出しになって 見ているぼくらに謎をかけてくる おまあは、だれじゃ おまああは、よくぼうか おまあああは、あほうか ▲

『山あり谷あり』言葉の展覧会1434

まぁ、人生にはいろんなことが起こりますね 山あり谷ありで 何が起こるかわからない 突然ってときもある 何かが起こったときは 冷静に はっきり方向を見定めて お互い助け合って と行きたいものですが それがなかなか難しくて 世の中にはいろんな人がいて 何…

『仙人』言葉の展覧会1433

ふだんは平平凡凡たる 凡人 みすぼらしく 貧相な生活者 普通の暮らしをして普通に喋る ただ 詩を書くときだけは 雲の上に舞い上がって 鳥になり青空になり 仙人になる でっかい山に でんとあそぶ ● ● ・

『詩を書く人・S』言葉の展覧会1432

実にそっけなく 最初から熱きものなど無かったかのように 日常生活を営んでいる これは過ぎ去るもの 消えゆくもの 熱き言葉を語らず 残さず この街ではそんなふうに みんなが生活するなかで ひっそりと詩人は住んでいる ・

『笑顔』言葉の展覧会1431

家から駅へ向かう数分の間に 二人の人に出逢った ニコニコして自転車に乗るおじさん クスッと思い出し笑いをして歩く若い娘 渋顔をしていたぼくに 二人の笑顔が溶け込んだ 今日はなんかいいことがありそうだ ・

『考え始める人』言葉の展覧会1430

強い風雨をもたらした台風が過ぎ 今日はからっといい天気 退屈しのぎはもうとっくに過ぎ去っている 電話で寄せてくださる見知らぬ方からの嬉しい便り 小鳥がはしゃぎ、虫がうたい 犬が喜んでいる 遠くから聞こえてくる飛行機の音 人を乗せて ただ未来の提示…

『倒されたコスモス』言葉の展覧会1430

台風一過、朝起きると 庭に咲き誇っていたコスモスがみんな薙ぎ倒されていた 地面にうつ伏したままのコスモスたち 根っこから半分ごそっと引き抜かれているコスモス 触るとポキッと折れてしまうコスモス 花びらが一面に散り撒かれた乱闘の跡 これまで どれだ…