フクシマの藤城ひかりさんと
トチアキタイヨウさんらは
西宮浜で流れ着いた流木を拾い集めて
舟をつくった
7メートルの重たい舟だ
それを担いでえべっさんに参り
武庫川を上る
舟はずしりと肩に食い込む
足がもつれる
舟は武庫川を上流へ上流へと上って行って
途中で鳳来峡の方へ折れ山をのぼるのだ
生瀬まで辿り着き
河原で石ころを積んだ20メートルの
舳先が目的地の船坂を指している舟に出くわす
木舟と石舟の出逢いだ
記憶のなかで
その夜
めっきり冷えた夜風のなかで
木と石の舟は
仲良く一夜をともにする
あっ、ふたりの舟に灯が灯った
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神戸新聞(2012.10.26)
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