『空を飛んだ七兵衛』言葉の展覧会1458

生まれてからこのかた
空ばっかり眺めとった七兵衛は
みんなから馬鹿にされていた
そやけど七兵衛は全くそんなことは気にかけなんだ
だもんで参拾年目に空を飛べるようになった
みんなは羨ましがった
やがて七兵衛を尊敬するようにまでなったと
もう地上には戻りとうない
わしゃ、空男や、と七兵衛は言うた
みんはまた七兵衛を馬鹿にするようになった
そんなことには頓着しなかった七兵衛は自由に空を飛んで
駆けめぐり
雲と友達になり、光とたわむれ、オーロラに魅せられたと
そんなふうにして空を飛び回り
空の中へ入り込んでいるうちに
もう何年が経ったことやろか
みんなはすっかり七兵衛のことなど忘れてしもうた
いつのまにやら
とうとう七兵衛は空になってしもうたと
・・・
みんながよく空のことを気にかけるのは
ふっと、七兵衛のことを思い出すからなのか