『帰宅』 No.3711
この春から夏、夏から秋、そして秋から冬にかけて
都会は灰色で 憂鬱だ
みんなマスクをしてうつうつと歩いている
この院内では誰もが脅え、警戒して
いつもの声を発せず目だけがキョロキョロ動く
その目は多忙を極め優しく血走っている
所々、門が閉ざされ どこへ行っても疑心暗鬼
ヒトは殻に閉じこもり 心に鬼や虚無をかかえ 沈んでいる
ウィルスは賢明だ
ぼくは都会から遠くはなれて
里山で木々の間からもれくる木漏れ日を見ている
漏れ来る光の奥へもぐる
奥へ奥へ
すると、ボーッと浮かび上がる
あなたが
まぎれもないぼくのだいすきな あ な た
が
・・・ 飛び散る断 片
初冬。
今夜は底からひんやりとして
ほんに星がきれい
深海の底の 宙の果ての 暴発するちいさなちいさな火の玉の中の
内なるくにから 再びあなたはやって来て
通り過ぎる
いったい ヒトはどこから来て どこへ行くのだろう
ヒトビトはわからない まったくてんで
人新世の 世はさむ く う つ ろ
この星には過剰なほどヒトがウヨウヨいるというのに
欲望が丸出しで争いが好きなヒトが
あらゆる生命を食い尽くそうと・・・
ヒトはどこへ行くのだろう
いったいぜんたい
すれちがいざま
あなたはフッと あたたかい昊の吐息
固唾をのむ ぼく
一瞬
ほんのいっしゅん 何かを感じ て
消え た
何だったんだろう
生と死、地と天、いのち、無、またたく星、あるいはその 間 ・・・・・
大事なだいじなこと・・・・・伝えたいこと・・・・・
そのあと
残り香でこころがあたたかく ふくらんで
とにかく生きているんだよね
生きるって ・・・
ぼくは佇むばかり
世界のちっぽけな片隅で
ただ ただ
今
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