『「関係人口」から「信頼人口」へ』  No.3602

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関係人口」から「信頼人口」へ

                                    つながりの場
                         西谷コミュニティサロン「山里」


西谷に、コミュ二ティサロン「山里」が!!
「山里」。とても懐かしい喫茶店です。もう40年以上前になるでしょうか、若い頃にコーヒーを飲んだり軽食をとったり、ジュークボックスで音楽を聴いたりして足繁く通ったお店です。その「山里」がまた復活してよみがえったのです。義母辻秋子さんの後を継いだ辻幹子さん(15年前から「こはるちゃん」に携わっておられる~二〇一八年にしたによいしょ六月号特集~で記事)が「おもてなしの心」を持って再開されたのです。この「山里」は『ばうむ』(Vol.4)などで紹介されていますので、ここでは、地域社会西谷に初めて生み出されたコミュニティカフェ・サロン「山里」の意味を考えてみたいとおもいます。
  ①地域での憩いの場
「山里」が再開されてもう一年以上が経過しましたが、毎週水曜日になると地域内外の人たちで昼時はいっぱいになりワイワイと明るい声が聞こえてきます。老いも若きも老若男女が集って食事をとり、コーヒーを飲み憩っています。この西谷にかつてあったような「縁側」談議や「畦道」外交、「井戸端会議」がよみがえっているのです。日頃たまっているストレスや鬱憤を発散させたり、自分の思いや考え等を話したり聴き合ったり、クラフト作りをしたり、囲碁をしたり、カラオケを歌ったりするなごやかな広場になっています。

   ②出会い、交流し、つながる場
  ここには実にさまざまな方々が訪れます。西谷では南の切畑や武田尾、玉瀬から、北の上佐曽利や下佐曽利から日頃めったに顔を合わしたことのない人たちがやってきて再び親交を結んでおられたり、かと思えば、宝塚南部や他市他府県から来られた方と出会い、新しい関係を結ばれたりしています。思いもよらない人、めずらしい人、観光にやってきたような人が来て交流したり繋がったりする「出会いの広場」「交流・つながりの場」になりつつあります。こういう場はお互いの生活の価値観を「共感できる人たち」が集まります(自己利益・金儲けだけを追求しておられる方々は来られないでしょう、おそらく)。ここで新たなコミュニティづくりの基盤が形成されているのです。

   ③「こはるちゃん」に継いで、地域の居場所
どこの地域でもそうでしょうが、格差社会を生む今の社会は、自己責任が強調され、身体や知的の障害をもつ人、認知症のある人、ひきこもり、ひとり親、高齢者などが生きにくい社会となってきています。そういう方々が「山里」に来られて、「ほっとできる」居場所的な場にもなりつつあります。さまざまな困難な状態に置かれている人に気づき、つながり、支えていく関係がある地域は誰もが生きやすい社会です。「山里」はそんな地域社会をつくっていくための一つの試みの突破口になるかもしれません。
 昨今、『関係人口』(にしたによいしょ3月号記事)を増やそうということで、全国のいろんな自治体が動き始めていますが、『関係人口』づくりは、内輪だけえなく他者との関係を結ぶということを内包していなければならないでしょう。弱い立場の人たちとの関係もそうです。『関係人口』をつくるにはやわらかさとやさしさ,、そして面倒見のよさや持続で
きる力が大事な条件なのではないかと想います。ヒト科のヒトが人間になるための「成熟」(大人になる)化が土壌として求められます。
と、偉そうなことを書きましたが、どんな人にとってもほっとできる居場所が必要なのです。「ひとの世話をするのは当たり前」と言われる辻さんがつくられた「山里」はそ
んな場となる機能を有し、関係人口から『信頼人口』へつなげていく先進的な活動です。

④分かち合いの非市場的な、相互扶助・相互支援の店
 地域のコミュニティサロン「山里」の特徴の一つは、非営利的だということです。ここは、「おたがいさま」と「共感」で成り立っている店です。
 辻さんは、「5%の会」と言って、近所のみんながおかずや果物、野菜、それに自分が作った一品を持ち寄った食事会のような場を提唱されました。それらが並んだバイキングの飲食店としてたらふく食べてたったの三〇〇円! そして、「珈琲焙煎工房Hug」の美味しいコーヒーは、二〇〇円。
 なんという安さでしょう。なんというあったかさでしょう。
かつてこの西谷にあった互恵的な「おたがいさま」の居場所とそこでの「分かち合う」食事が復活再生したのです。 これは、ボランティアの精神というよりも「おたがいさま」とか「分かち合い」の精神でしょう。
来たるAIの時代(第四次産業革命)において世界経済が、貧富を生み出し格差社会をつくる欲望による利己的な金融資本主義から徐々に「信頼」を中心にした経済が営まれていく事が予想されます。「山里」は「おたがいさま」の心あふれるパブリックな中間共同体(セミ・パブリック共同体)の先駆的な実践なのです。

⑤学びの場であり、後世代へのバトンタッチの場
  少子高齢化のすすむ時代です。この西谷でもここ数年来、産まれてくる子どもが一桁台になって来ました。それもそのはず、若い人たちが西谷からどんどん離れていっているのです。かつてのような(数十年前のような)活気のある若い人たちが地域社会西谷の中心になって何事も動かしていた時とは正反対の、高齢化率(六五歳以上四四、三%。宝塚市南部では二七、五%~今年8月現在)の高い地域になっています。このままいけば今後二〇年くらいでおそらく限界集落化してしまいそうな予感がします。
古いものは新しいんだし、それを古いまま埋没しないで新鮮なものに蘇らせなくてはならないでしょう。今こそピンチをチャンスに変える時だと思います。
そこで、「山里」の新しさと試みです。
辻さんは交流会や様々な会に参加してこう語られます。あちこちのいろんな出会いやつながりから学びとなったのは、「どんな地域でも支え合う地域をつくりたい思いはみんな同じで、地域が違うからこそ話せることがわかりました。自分が活動で悩んだときは『また助けて』と相談できる仲間ができました」(「ばうむ」より)と話されています。これは、「西谷は閉鎖的」だと言われていたものを打ち破る言葉ですし、ひらかれた新しいコミュ二ティ西谷に向けての示唆的な明るい展望が感じ取れます。「山里」は個人の利害から遠く離れて、若い人たちと共に成熟していく学びのサロンとして、次の世代をつないでいく場として、新生していく西谷にとって重要なコミュニティ拠点となるにちがいありません。