『緑の恋』 No.3518
食べた後の残骸
今年もまたキュウリがカラスにやられていた
裏山の木からカラスは食べ頃をジーッと伺っている
今度はスモモがやられる番だ
雨が降り続き カエルが喜んで鳴いている
夏がびっしょり濡れる
過去も未来も濡れる
ぼくは雨の中
薄黒く分厚い雲に手をかざして呟く
そんなに哀しさを降らさないで
緑がけぶる
あの果てまで行っているようだ
いらないよ まだ
生きている喜びをかみしめたいから
緑がやけに目に染みる
生きる哀しみを越えて
あちらこちらで恋をしている
植物たち
だからしっとり濡れ輝いているのか
草草、木木から熱いまなざしが飛び交っている
夏の 雨の 緑の 星の 大地の
薄靄のなかで充満する喜びの喘ぎ
ぼくの目の中は緑の海
ところどころに咲く花
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