『叫べ! 白骨』 * No.3016


深夜も煌々とした灯かりの
林立するビィルディングに
囲まれた小さな家です
外ではあちらこちらで端末機が騒音をたて
あらゆるものが閉じられていて
のっぺらぼうのコピーがうようよとしています


狭い部屋の電灯を消して
風をききます
川をこえ
空をわたり
森に入ります
千年後の森です


おそろしく遠くへいってしまいました
そこから白骨は見ています
ただじっと見ているのです


いたいけなほど純真で
枯れ枝の先をよぎる風にも
身をはにかませて
空に星に いのちの交信をして


量ばかりの人間の中で
一点 清冽な質がありました


いまめっきり星が減り
かすんでほとんど見えなくなりました
ここは何もかも変わってしまいました
いいえ何も変わっていないのです
あの恐かった日々ののまま
ただ空は晴れたり曇ったり
・・・・・


青い青い春
たった一人の娘も愛せずに
獄死させられたユン
「私を呼ばないでくれ」
「呼ばないでくれ」


遠くの口笛は幻です
暗がりに犬が吠えて
ビィルディングの谷間を響き渡ります
風に吹き晒された星は
靄がかかったままで


    叫べ!
        白骨
           この白い闇に
           この馬鹿げた人の世に
    叫べ ふるさとを!


そこでは生命の上に生命などいらないのです
だれでも仮の「ふるさと」
また別の
不可視の惑星
それはまた別の宇宙
ふわふわと軽やかな遺伝子
「ふるさと」をもちながら
「ふるさと」を越えるしかないのです


空は病み
夜の冷たい風の中で
叫べないまま
いまなお彷徨っている
ユン・ドンジュ


なくしたものをさがしに
なくしたものをさがしに
なくしたものをさがしに
なくしたものをさがしに


ほのかな星の灯かりで
コンクリートの割れ目で
一瞬息を吹き返した草があります
そこで白骨は光るのです
透明に