『タクマ』 言葉の展覧会1051

その日
警報発令後もタクマは逃げずにここに残った
アブナイ 早く
何人かで協力し70人余りを2階に非難させた
早く早く
歩けないお年寄りをおぶり
車椅子を抱えて
早く!!
しかし
津波はあまりにも大きすぎた
またたくまに水は1階から2階に
ああ、腰の高さまで迫る
「窓を開けて水を逃がそう」と叫ぶ
それでも増水の勢いは止まらず
あっ、というまに外へ流された
津波は同僚とともにタクマをさらっていった



未だタクマらは不明のまま
「おっかなかったべな。やんだくる波の高さだ。悔しいな」
来る日も来る日もタクマを捜し回る父母
もう2週間が経とうとしている
・・・・・
「当然の行い。おっとりした子だと思っていたのに。
私の誇りだ」
父は自らに言い聞かせる
「苦しんでいるのは私たちだけじゃない」
タクマの思いを受け継いで今日も
おにぎりや野菜、下着類などを軽トラックに積んで対策本部に届ける
「 助け合わなくては」




※今日の神戸新聞の記事「救助に奔走後不明に」を読んで、涙が出て止まらなかった。宮城県石巻市北上町の市北上総合支所で被災された石川拓真さん(27)らのご冥福をお祈り致します。