『言葉を打つ』 言葉の展覧会985
『言葉を打つ』
洪水となった流れのなかで
わずかネットに引っかかる言葉
だが、すぐに捨てられる
いたいたしい言葉
今朝の冷え込みは厳しい
棒で打つ氷の寒い音
老母がつくる味噌汁に入れるために
畑にネギをとりに行ったが指が凍てつきいたい
キーボードを打つ指もいたい
いつのまにかこんなもので言葉が打てるようになったのだ
浮遊したままの
打っては捨てられ 捨てられては打つ
限りない繰り返し
不在のままの
側に散乱する紙片に
書きなぐられた言葉
打つまでの充足
捨てられる言葉
失われた言葉
冷たい風が吹いてきて
ひらひら舞って朝空に消えていった
ただ山の向こうにあったのは
太陽、という言葉
<100億年後には、広がる宇宙のみ
あの地球も太陽も何もない>
鳥が鳴いて
まわりがサーッと明るくなった
ような
*
※写真は、宝塚南口の武庫川中州に並べられた石たち・「生」