「まほろ駅前」 言葉の展覧会85

人が吸い込まれるように集まっていく
都会の外れの駅の朝
ざわめく街並み 行き交う人
さまざまな営み
やがてそこから
それぞれの巣に帰るために散らばる
夕暮れ いろんな思いを抱えて
明かりを灯すビルや家々


だれかがどこかで
ほんの少しの手助けとあたたかさを求めている
ときには叫び声がする
人生の隙間をぬって
便利屋の軽トラックは走る
無くしたものは二度とはもどらないが
醜く息苦しくなった自分の殻をまたひとつ破って
そっと小さな幸せが再び生まれる


繰り返す悲しみと喜びと
終わりがまた新しいはじまりになって
夜明けがくる



※『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん文藝春秋)読了。