人が吸い込まれるように集まっていく
都会の外れの駅の朝
ざわめく街並み 行き交う人
さまざまな営み
やがてそこから
それぞれの巣に帰るために散らばる
夕暮れ いろんな思いを抱えて
明かりを灯すビルや家々
だれかがどこかで
ほんの少しの手助けとあたたかさを求めている
ときには叫び声がする
人生の隙間をぬって
便利屋の軽トラックは走る
無くしたものは二度とはもどらないが
醜く息苦しくなった自分の殻をまたひとつ破って
そっと小さな幸せが再び生まれる
繰り返す悲しみと喜びと
終わりがまた新しいはじまりになって
夜明けがくる
※『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん(文藝春秋)読了。