「倚りかからず」

茨木のり子の詩でもうひとつ影響を受けたのがあった。それは「倚りかからず」。
どんな思想や権威にも寄りかからず自分の足で歩け、とお尻をひっぱたかれた詩である。どうして茨木のり子の詩は、母のようにたくましくて優しいんだろう。


     倚りかからず

                  茨木のり子

もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
自分の耳目
自分の二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ