『パラダイム』 * No.3390


変わった
 と かれは自信たっぷりに語る
ほんとに変わったの
 と かのじょは不安げに問う
変わったよ 
 見てほしい このリアルを
ちっとも変わってないわ
 と かのじょは疲れ果てて言う
でもここは変わったじゃないか
 かれは声を荒げて説き伏せる
うーん ほんとにほんとうに変わったの
 かのじょは溜め息をつく
そのうちもっと変わるよ
時代そのものが変わるのだから ガラリとね
ん? あなた、時代によって変わる性格?
そうじゃないけど ホモサピエンスの時代はもう終わっていくんだ
ん、ん? 何言ってるか ちっともわからない!
自分たちを物語る意味が無くなるんだよ
・・・・・


     わたしは二人の声色を伺いながら
              出口をさがす

 が                  
                見えない

小さな箱の中で
夫々薄闇を見つめるばかり
背中を合わせて


  わたしは物語を閉じて

 あっ
  と唸る



かれとかのじょなんていないのに