『ゆれる灯』 * No.3093

過ぎ去っていくもの
なにもかも


昨日、元気でここにいたやつが
今日はいない
ひとってはかないね


あくたれをよくついていた
同級生が死んだ
じつにあっけなく


老いた母が残された
どれだけ悲しいことだろうか


家は少し遠いけれど
幼いころは何度か遊びに行ったことがある


自治会長になるぞ、と口癖のように言っていて
副会長のまま、道半ばで死んだ
最近頻繁に会い
なんだ、こいつは
と何度か思ったことがあるが
心が座っていて憎めず
いいやつだった


クルマで走っていると
よく道路の隅で草引きをしていた
「この頃いつも、一人で自主的に道の清掃をしているんや。あそこの歩道、草ぼうぼうやったけど、見てみ、きれいになったやろ」と言う
「世間良し」のやつだ


幸ちゃん
幸せになってほしいという願いから命名されたのにちがいない
人の幸せも願っていたようだ


ここ数年、ぼくの展覧会には必ず来てくれて
作品をとても褒めてくれた


葬式の日には、同級生がたくさん集まって
かなしい同窓会になった


やがて
なにもかも過ぎ去っていく


この村の ひとつの
灯が少しゆれて
消えた