『ある夢のものがたり』 * No.2971
茨の道を
夢がたったひとり歩いている
あぶなげに
たよりなく
芯をもとうとするがどこかもどかしく
憬れだけが生きる糧
ときどき過去がふいにやってきて
夢をおびえさせる
立ちすくみ ふるえる
そこへ未来がやってきて
過去はもう過去なんだよと
過去を追いやってくれる
悪が待ち伏せていて
からかい苛める
やーい、ふらふら夢
おまえなんてクズだ ドブに落ちてしまえ
と うしろから蹴った
すると 善が駆けつけてきて
悪をけちらし助けてくれた
どうしだよ
しばらく遠くで見守ってあげるよ
こっそり不条理や絶望やらがそばに来て
夢を取り囲み
夢なんて寝たら見るただの夢で
かなわないし
悪夢ばっかりさ とささやく
それを見ていた希望が
不条理や絶望らの前に立ちふさがり
両手をひろげて
夢は実現するためにある
夢はじつに素晴らしい と言う
夢は光合成をしている
太陽と水を体内にとりいれて
澄んだ空気をつくる
淀み汚れた空気はいやだ
あつかましい横柄な生き物はもっときらい
夢はたったひとり森の中へ入り
木を抱き木と交換する
木の間に間にのぞく青空を眺め
谷川のせせらぎと小鳥たちの歌を聴きながら
ぐっすり眠る
夢は憬れと手を取り合って
大空をかけめぐり
夢の国であそぶ
夢を見る
森でぐっすり眠ったあと
夢は夢をかなえるために
旅に出た
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