『晩春、ひとつの花』*No. 2965

緑があたり一面に 降り注いでいる
光は跳ね返り 折れ曲がり 
またはねかえって 花の中へ
もぐって潜って
奥の遠い星を覗く


かつてあった華やかな街
なごやかな夕餉 
愛し合った二人の骨は
いまはもう深い土の中


土上で
花はささやかに輝く 
営みを乗り越え 儚さを飛び越えて


一瞬の とわの喜びを隠すように
この花は
恥じらいが
とりえだ


ドキドキ