『草をおもう』*No.2838

深夜に目が覚めて

をおもってみた
砂漠に小さく身を寄せ合っている草
大都会のコンクリートの割れ間にそだつ草
道端に、畦道に、空き地に、壊れた鉢に
周囲のいたるところに草は在る


大地に草がのびのびと生えている
地球に草は生き生きと生きている


ぼくは草に水をあげない


弱いようで
厳しい風が吹き付けようが
激しい雨にたたかれようが
負けずに 強く しぶとい


助けも受けず
生き延びる戦術はしたたかだ
ちょっとやそっとのことでけっしてへこたれない
人に踏まれても
ペシャンコになっても
また立ち上がる


草は人のように
意地悪もせず イジメもしない
悪というものは知らない
知る必要もない
せせこましくせず カネ、カネと言わない
嫉妬も妬みも裏切りも憎しみもない


ぼくは草になりたい


草はおそろしく遠いところを
見ているようにおもう
遠い遠い未来
地球が爆発したときも
草の種は欠片に乗って
別天地を求め
旅をするだろう
おそらく


新年に草をおもってみた
ぼくは大好きな草に
こころのなかで
水をあげよう