『悲しみに雪が舞う』言葉の展覧会1495

雪が舞う
悲しみに雪が舞う
今日降る雪は妙に悲しい
雪が舞う
遠い昔の楠木に雪が舞う
懐かしい村人の憩いに
懐かしい旅人の癒しに
懐かしい子どもたちの遊びに
懐かしい老人たちの涼みに
懐かしいその樹の下で撮った卒業写真に
雪が舞う
お寺の傍の
いまはもう無い楠木に雪が舞う
百数十年も生きてきた楠木に雪が舞う
楠木の苦しみの叫びに雪が舞う
切り倒された楠木に雪が舞う
便利さと利己に囚われた人に雪が舞う
延長線上の原子力発電に雪が舞う
滅ぼした文明に、滅ぼしたその心に雪が舞う
滅びる文明に雪が舞う
人の愚かさに雪が舞う
雪が舞う
今日の雪は妙に悲しい
雪が舞う
木への弔いに雪が舞う
雪が舞う










作品18