『黒猫』言葉の展覧会1485

イルミネーションやネオンがキラキラ輝く夜
疲れ果てて背を丸め
とぼとぼと
不夜城の街角を曲がる若者
何かに追い詰められているような
何もかも忘れてしまいたいような
目はうつろで
先が見えない
曲がった通りは暗く人気は無い
時々ネオンの光が届く
ふと
ビルとビルの暗い谷間を見ると
目が合った
逃げずにじっと若者をを見ている黒猫
これで3度目だ
こんなところに
危険をかえりみず生きている野良猫
こんな寒いなかを
おそらく捨てられたのだろう
人を避けているのだろう
だが
黒猫は見つめている
若者も見つめる
お互い、見つめ合う
若者はカバンから半分のパンをとりだして
ビルの谷間に置いた
挫けるなよ
黒猫は素知らぬ顔



若者は背筋を伸ばして
一人住まいの家路を急いだ
今晩はぐっすり眠れそうだ






※作品12