『駅前の小さな本屋』 言葉の展覧会1070

この春、売布駅前の小さな本屋さんが店をたたんだ
「おとうさんのからだが、もうもたなくなりまして・・・」
と老いたおかみさんが決心したように語られた  
「残念です。さみしい限りです」
ぼくは30年以上もこの本屋さんを利用している
もうすっかり顔見知りになってしまった
本屋に行くといつも仲好く
静かに語り合われる夫婦がいた
言い合っているところを見たことがない
本はそんなに置いてないんだけれど
ぼくはきまって1冊の本を買う



これからも仲睦まじく寄り添って
「おからだを大切にしてください」
数日後ぼくはふとカメラにおさめておこうと思って
本屋さんに行ったが
もうシャッターがおろされていた
ぼくのなかの大事なものが
何か一つ失われたような気がした