「夏雲」言葉の展覧会607
ごろり
と畳にねころんで
窓外をみている
ゆっくりゆっくりと
雲が
青空をおよぐ
昨夜のどしゃぶり雨が嘘だったみたいに
じつにのんびりと
窓全体を白いわたが占める
やがて透き通った青一色に
ゆっくりゆっくりと
多忙さを笑うかのように
スピードを哀れむかのように
ふと気がつけば
蝉が鳴いていた
ぼくにとって
この夏はじめての蝉の声だ
ゆっくりゆっくりと
雲が
青空をおよぐ
うつりゆくもの変わりゆくものを
すっかり呑み込んで
ゆっくり
ゆっくりと
*