「『信』は要りませんか」言葉の展覧会409

世界は複層し偽りだらけで汚れていた
「『信』は要りませんか、『信』は」
荒涼とした山にある朽ちた切り株に座った
少女はもう歩くのが嫌になっていた
これからどれだけ歩かなければならないんだろう
喧噪ばかりでせわしく明るすぎる
不夜城の都会を抜け出して
建物が密集した列島の中心を眺めていた
空々しい過去の転変も現在の偽装も忘れて


しばらくして
眠りに陥ったのだろうか
ぽっと明るんだ夜明け空が見えた
と同時に声なき声が聴こえてきた
ウミヲダシキッタホウガイイ
少女は昇る朝陽をながめながら
涙をいっぱいためていた


ーーかみさま、わたしは今日も生きてゆきます