言葉の展覧会72

何十年もかれらは戦い続けてきた
赤は青を攻め青は赤を反撃した
ときに赤いものが勝ち
ときに青いものが優勢になった
赤は恨みで真っ赤な炎になり
青は憎しみのあまり冷たい氷になった
お互い違いを認めないばかりに
戦いはいつまでも続いた
なぜって
戦いこそが双方の生きる証だったのだから


しかしそのなかでごく僅かではあるが
赤いもののなかに青いものが芽生え
青いもののなかに赤いものが息づいた
これら極めて少数派は
赤でもなく青でもない紫というものを生み出した


それから何百年という年月が経ち
赤や青のなかに紫が混じっていった
いつしか戦いは忘れられていき
古い過去の遺物となった
今は戦いを知らない青や赤や紫が平和に楽しく暮らしている