言葉の展覧会29

遠い昔に置き忘れていたものが
この店の陳列台の片隅にあった
そこだけはほんのりとかがやき
まるでぼくが来るのを待っているかのようであった
ざわめくこころ
なつかしい時間
ぼくはいつしか少年になって走っていた
野を越え山を越えて
どこまでもどこまでも
遠い昔の忘れ物
それはくったくのない調べ
豊穣な味
誰にも言えないぼくだけの
秘密の宝物