肯定

肯定

  
あるやわらかな塊がもちあがり
かすかにふるえている
痛々しい穴
開いては閉じ 閉じては開く
そこから次から次へと生み出されてくる
異形ないのち


息苦しい 生き苦しい
保留し続けてきた生きざま


背中に産毛が伸びて絡まりあう
長く垂れた耳は人間の歴史を記憶し
その虚ろな瞳は遠い遠い過去を見つめている
笑いは怖いのだ
エラーは憎悪から幸せをつくる


しわくちゃな老人の顔をした少年たちが
ケータイでピコピコ遊んでいる
ここに在るという謎


私の身体なんて在ない
一〇〇年後の世界


広がる言葉の汚染
閉ざされた空間から
関係の監視と過度な期待と利害
言葉のゴミの山から
ひそひそ話 そして大声
嬌声が
奇声が


巧妙に仕掛けられて
真実をけっして伝えない
みんなが裏を読もうとしたとき
肉塊は振動する
発せられる遠心力
とにかく自己を肯定するしかない
ただ在るということだけで
肯定せよ
なにがなんでも肯定せよ私
世界の中心で肯定を叫ぶ


私の存在証明のためにもう一つの私をつくり
記録する
私から誰かへの記憶
単つの細胞だけが知っている


断絶、断絶
また流動変化


こわばった肉塊は伝えたい想いをもっている
そのためには言葉に潜む嘘を
見破らなくてはならない
目覚めはぼんやりとして
静かで



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