詩の力   宮沢賢治「雨ニモマケズ」

aiueokaki2006-02-26

茨木のり子の詩を読んでいると、詩の力というものを感じてしまいます。詩は人の心を癒したり楽しくさせたりするだけでなく勇気づけ、人の人生を変えてしまう力もあるようです。そのことを宮沢賢治の詩「雨ニモ負ケズ」で知ったのです。


この1週間で、宮沢賢治の詩「雨ニモ負ケズ」に3回も出会いました。1つめは小学生が歩きながら暗唱している場面。2つめは講演で。この講演は中学校教員をこの3月に退職するH先生の話でした。ここ6年で身近な人(学校の周辺〜教員や生徒等)が6人自殺した。こんなことはこれまでになかった。考えられないほど辛く悲しい事態に直面している。「学力」なんて言っているどころではない。今日の心の状況は宮沢賢治がいた時代の東北の「冷害」に類似している。いまこそ賢治の「雨ニモ負ケズ」が必要である、・・・と。


そして3つめは、テレビ番組「生命38億年スペシャル”人間とは何だ!?”」(毎日テレビ)です。昨夜のテレビ番組は終わり頃しか見れませんでしたが、「末期ガンパパの挑戦」は涙しました。
ガンで余命半年から1年という宣告を受けた40代の2児のパパは絶望のどん底に突き落とされた。死ぬのがこわかった。そんな中で園児である娘が暗唱していた「雨ニモ負ケズ」を聞いた。「南ニ死ニソウナ人ガアレバ コワガラナクテイイトイイ」という言葉を聞いて、死のこわさをふっきることができたという。それから笑顔が取り戻され、ガンの痛みに耐えながらも自分の大好きなラリーやスキーツアーに挑戦していく・・・。


この3つの「雨ニモ負ケズ」との出会いからぼくは、詩というのはただの言葉であるが凄い力があることを新たに思い知らされました。
茨木のり子宮沢賢治のような詩が1編でも書けたらいいなぁ。



        雨ニモマケズ                                      

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋(いか)ラズ
イツモシヅカニワラツテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジヨウニ入レズニ
ヨクミキヽシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病氣ノコドモアレバ
行ツテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ツテソノ稻ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ツテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクワヤソシヨウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボウトヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハ
ナリタイ



                     (宮沢賢治