真夜中の道

aiueokaki2006-01-21

「寒いわ」と何度も言う
「寒いなぁ。雪が降るそうやから」
午前3時
Nさんとぼくは背中を丸めて歩く
プルコギ、トライアングル、白木屋デニーズと
ついさっき4次会を終えての帰り道
酔いが残っている
9人が6人になり、3人になって
今は真夜中の道を二人で歩いている
「青春がまだ残っているんや」
「火をつけたら燃えるで」
深夜の長い道のり
空のタクシーは通っているが
タクシーには乗らず
ただ歩く
「歩くのもいいね」
「うん」とぼく
マンションの間をくぐり
路地を曲がる
ぼくは喋っている 頷くNさん
石段を上って
民家の間を縫って歩く
ぼくは喋り続けている 相槌をうつNさん
高架下を潜り
広い車道に出た
「Nさん、美人でいい人やからいつかはきっと良い人見つかるよ」
「そう・・・」
「あせらずに、ゆっくり男を見る目を養わんな・・・」
「うん、あせらへんわ」
Nさん、28歳。  一人の幼い息子がいる
しばらく歩くと黄点滅を繰り返す信号がある
横のコンビニはやけに明るく 客も入っている
この信号を左折し
小川沿いに100メートル北へ向かって
小さな橋を渡った所がNさんの実家だ
今はもうみんなぐっすりと眠っている
そうっと家へ入らなければ
さようなら
「おやすみなさい」
ぼくの家はまだ北へ800メートル程
ポケットに手を入れ
背を丸めて歩く