「近代文学の終り」柄谷行人

aiueokaki2005-12-03

  久しぶりに本という本を読んだ。
 2ヶ月ぶりぐらいで本を読んだことと、自分を突き動かすような本であったということでまさに久々なのだ。
 近代文学が終わっても資本主義は終わらない。今の日本は知が消え、シニシズムとナイーブばかりが蔓延している。イロニーは終焉し、ジャーナリズム精神は消え、他人指向型人間(リースマン)の訳の分からぬ(かえって恐ろしい)現状肯定のみがあるばかり。社会主義運動に変わって宗教原理主義の台頭してきた世界と大きく右へ転回し住み辛くなってきた日本社会。歴史は反復する。・・・。しかし、回復の余地のない、何もないところからまた前へ歩き出そうとする。
 絶えず移動し続ける柄谷行人の批評は明晰で驚くほど新鮮であり、希望を捨てていない。柄谷行人はすごい、世界に通用するいや世界に発信できる希少な人である。生産過程から流通過程へという理論的な転倒、消費者としての労働者運動、アソシエーション、非暴力、民主主義にくじ引きの導入、憲法九条の世界に向けての普遍化、カントの世界共和国の斬新的な実現、・・・・・。迷って途方に暮れているぼくらに明日への展望をも提示してくれる。



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