岸本おじさん  ー岸本康弘

aiueokaki2005-07-11

   岸本おじさんとは友だちだ。今、ネパールから帰ってきている。家が近く(宝塚の安倉)なので気が向いたときにお喋りに彼の家に寄る。
 岸本おじさんは、四肢が不自由である。ところが、とても元気だ。かつて世界のあちこちを松葉杖を頼りに歩き回っていた。ぼくは世界ではないが、岸本さんとは近くのいろんな所へ行った。十数年程前までは松葉杖をついて世界まわっていた岸本さんだが、阪神大震災以来(周りの壁棚に置いていた本が落ちてきて埋もれてから)這うことすらままならなくなってしまった。もう駄目かな、と思いきや、動きもできない岸本おじさんが、ネパールに学校を建てると言い出した。驚いたのなんの。ネパールは識字率が超低く、貧困で学校へ行けない子や、時計の文字盤すら読めない子がいる。自分が子どもだった頃とオーバーラップしてきたと言う。
 岸本さんは、学校へ行っていない。1歳の時の脳性まひで学校へ行けなかった。友達に教科書を借りたりして、鉄道員国鉄)だった父に算数などを教えてもらっていた。九歳だったか、父が亡くなった。その後、祖母の内職を手伝って参考書を買ったりして独学で勉強を続けた。そして41歳頃から世界各地を旅するようになった。しばらくしてぼくは詩の仲間として岸本さんと知り合い親しくなった。ネパールに学校を建てるまでずーっと付き合ってきたが、ものすごい精神力だ。有り金をはたいて造った学校は、数年前のわずかな子どもの人数から出発して、今は160名強(1年〜5年生)が学んでいるという。
 「自分に甘えず自ら活路をひらけ」というのが、かれの教育観の一つのメッセージである。なんでこの体でこんなに前向きなんだろう、どこから世界をもまたにかけてしまう行動力が出るのだろう。いま、ピピア・売布のシネマで、文学の映画の特集をやっている。それをかたっぱしから観るそうである。前にそのお誘いがあった。でも明日はペケになった。
 ネパールの岸本スクールの校長である岸本おじさん、67歳。未だ元気である。


※※ぼくの作った岸本おじさんの紹介絵本「にんげんやめんとこ」(ああ、画像がどこかへいっている)   ↓
  http://www.jttk.zaq.ne.jp/baatp100/douwa/kisimotoojisan/ningenyamentoko.html