『無常』 No.3585

あの大嵐の日から
ぼくは未だに言葉を失っている

 

水に浸かるまち
泥まみれの家
声も出ずただ呆然と立ち尽くす人・・・

 

次から次へと災いの到来
世の常なら無いことだらけの世界
たったひとつだけだったものの喪失
列島民のかなしさ

 

涸れた涙が鎮まるころ
やがて静かに
僅かに笑みを浮かべながら立ち直る
逞しさとともに

 

ひと知れず
崖っぷちにへばりついて咲く
ちいさなのの花がかすかにゆれて