『晩秋の冷たい雨』 * No.3138

冷たい雨が降っている
紅葉がしっとりぬれる
もみじじゅうたんも
いちょうじゅうたんも
しずかな村も
しっとりぬれて


しと しと しと


道はだれも通らない
わたしは炬燵にまるまって
きのう街で買ってきた本を読む


しと しと しと


雨が山野をぬらす
少年も少女も道を通らない
奢れるものも欺くものも通らない
死者も生者も通らない
とおくでカラスだけがやたらに啼いている


しと しと しと


字だけ追って読んでいると
字が浮かび上がり
ふわふわただよい
わたしはねむりにつく


しと しと しと