『深海』＊No.2565

巨大な波が押し寄せて来たんです
冷たい水の中は辛いですな
でも苦しいのが消えてゆきます
もうとても長い間こうして
寄せたり引いたりして
ようさんの人と話しましたわ
助けを待っているんですね
そうですねん　こんな今も
魚も一緒にすんでいるとかわいいですね
上の方でキラキラ 　
光って揺れているのがきれいですなあ
あっ　大きな影が通っていますね
舟みたいやな
うん　そのように見えますが
鯨のような感じがします
いやあれは舟ですよ
そうですか　きっと
そうでしょうね
引き上げてくれるかもしれません
浮かび上がってください
帰れますよ
いや、そんなこと
ちょっと・・・
何をためらうんですか
わかりますよその気持ち
早く気付かせないと遠ざかっていきますよ
さあ、早く
わたしはいいんです
わたしはもう見えないんですから
ほんの一部で・・　わかりませんから
他の人たちはいいと思います
そんなこと気になさらないで
ああ、でも・・・
いいですいいです
たまに思い出してくださればいいんですよ
ありがとう
きっとそうします
そう伝えます　でも分からないかもしれません
それでいいんです
そんなものなんです
しかたないんです
みんな自分のことにせいいっぱいで
せやけど・・・
すぐ忘れてしまうんですよ　みんなは
あまり考えないで
さあ、早く
さようなら

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