『喪失・別離 MARGA*1』 言葉の展覧会1155

どんな言葉も出なかった
どんな悲しみの言葉も
どんな恐ろしさの言葉も
どんな慰めの言葉も
どんな祈りの言葉も
どんな言葉も出なかった
ただ呆然と
立ちつくすのみだった
・・・



一面
 瓦礫と
  更地になってしまったところに
雪が降る
 かつてあった街
  かつてあった家


かつて行き交っていた人々
辛く悲しい雪が降る
 波がさらっていった
  人の営み
   命
    雪が降って真っ白に



残された苦悩に 雪が降る
深い悲しみに 雪が降る
寒く冷たい雪が降る



  ・・・
あのことがあってから
内側からかぎりなく崩壊しつづける
マーガ
いつしかかくれんぼ
かくれたきみは
いつまでも出てこない



     消える



残された沈黙のゆりかごは
かすかに揺れて



     落ちていた貝
     耳に当てると



     遠くから
     海の声


恐ろしい海の声



海に抱かれて
マーガは眠っている
卵を抱えながら




     深海にひっそりと
     哀しみがすんでいる




いのちって儚いもの
マーガ
泣かないで



     コップから零れ落ちる
     海の
     なみだ


未明 それにしても雪がちらつき猛烈に寒い
人間(じんかん)の底を吹いている
空無な寂静たる風
ただがむしゃらに詩を書き続けながら
時間の破れ穴からそっと覗く
言葉と世界の秘密
記憶が震えている