『ひとつの絵』 言葉の展覧会1013

田舎の蔵の奥から
埃のかぶったひとつの絵がみつかった
突然
明から暗に反転した
あのとき



大地の震えにはひとったまりもなかった
物も人もみなグィッと振り上げてグラグラ揺さぶる
途端、すべての物が崩れ落ちていく
 こなごなになったカップ
  倒れ潰れる箪笥
   ひしゃげる家真っ二つの家
    折れる電柱ひび割れる道路
     押しつぶされる人泣き叫ぶ人・・・
 なすすべもなくただ呆然としていた
 あのとき

歳月を越えてよみがえる
ひとつの絵が伝える
壊れた時間と不確かな生
また再び問う
人の営みとは何だろう
人は何のために存在しているのだろう



※田舎の蔵を少し片付けていると、ひとつの絵がみつかった。1995年1月17日の阪神・淡路大震災の後に描いた絵。写真は一枚も撮らなかったのに、絵だけを描いてしまった、あのときの。