『盲人夫婦』言葉の展覧会799

近所に盲人夫婦がいる
二人は寄り添うように
ゆっくりと家から駅への道を
私が数分かかるところを
20分も30分もかかって歩いている
二人とも白い杖をつきながら
かたく手を握り
狭い自動車道を通り横断歩道を越えて
ゆるりゆるりと歩いている
人や車は二人を避けて通り過ぎる


この都会はいまのところ平穏に動いている
ときどき不条理に気付き
二つの白い杖はこつこつこつこつと
ときに手を挙げ
杖の先の感触と耳の感覚
そして二人のともに生きようとする姿だけをたよりに
さまざまなものにぶつかりながら
風をうけ
さわやかさを呼吸している