『場所』 言葉の展覧会７６８

この場所では
あらかじめ欠落が含まれていて
議論とともにそれを埋めていかなければならない
けっして記号に頼らず
変革の物語にも熱を帯びない
長らくの停滞の後５人は集った
重い口を開いたＡは全体的な知が必要ではないかと問う
共存のための倫理を課題としているＢは深く頷く
いやそれは不可能だ分散型でいくしかないとＣは軽く答える
堅牢に首尾一貫性を貫くＤは歴史を現在に当て嵌めて述べる
一番若いＥはなんとかまとめようと黙って聴いている
Ｃは環境設計に諸問題を還元していこうと呼びかける
Ｂはそっぽを向いているＡのほうをちらっと伺いながら俯く
しばらくしてＡは全体性の幻想をもってふるまうしかないと返す
討議は咬み合わないが場を生み出そうとする意志を共有している
空白の１０年を埋めるようにこの場にただ集まるだけでいい
困難が何層も重なるこの高台に
何時間か経過して議論があたたまる
欠落がひとつ埋められた
じゃまたこの次で

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