「幻なのか」言葉の展覧会670
すでに失われたという
しかし失われたものなどあったのだろうか
隣の家の解体作業を見ていた
細い木の柱や骨組みが倒され
屋根が落とされた
廃材がトラックで運ばれ
家はあっけなく跡形も無くなって
土だけになった
家族が死にあの人もこの人も
やがてぼくも みんな死んで
土になっていく
おそらく失われたものは幻なのだろう
あの時は一瞬の夢幻
ただ元にもどっただけなのだ
世に形あるものなんて
生命あるものなんて
そんなものだろう
おそらく
何十億年はまたたくまに過ぎる
しかし過ぎる時間なんてものはあるのだろうか
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