言葉の展覧会142

店に入ってきた男は
目をギロギロさせていた
口から発する声は
自信に満ちていた
より質を求め
最高の物を買いたい
自分は絶対者だ


だから店の中にいる他の買い物客とは誤差が生じた
早く自分の目当ての商品を買おうと焦った
しかし買いたい物がわからない
周りの客は気楽に買い物をしている
男は一人敏感になり疑心暗鬼になった
隙間を埋めるものは何なのか
やがて男は何も買わず店から出て行こうとした


店から出て行くには
まだ早かった