『限界の思考』と『世界共和国へ』

aiueokaki2006-05-07

今日は、連休の最後の1日で大切に過ごそうと思い、読書をすることにした。幸い、朝から雨が降り、外に出るには億劫で、家で読書をするには最高の環境だった。

読みたい本は積ん読状態でいっぱいあったが、前に読みさしていた本(早く読了したかった本)『限界の思考』宮台真司北田暁大双風舎)を読んだ。これがまた痛快だった。現代社会を縦横に切開し、そこから出てきたさまざまな問題に対処していこうと苦慮している。宮台真司は最近、右を走り出したというが、なるほどと納得いくところもあった。でも宮台真司は奥が深く歴史的で、右には右をという戦略なのか今の「ヘタレ右翼」を滅多切りにする(!?)。彼より12歳若い北田暁大は宮台に食いついて時に共鳴し、時に批判して宮台思考の根源や弱点をあぶり出している。戦後、そして今日の日本の社会や時代状況を知るには、最適の本である。


『限界の思考』を読み終えてからすぐに、先日買った『世界共和国へ』柄谷行人岩波新書)を読んだ。これは、『トランスクリティーク』のコンパクト版である。『限界の思考』が日本の思想的限界の克服を扱っているのに対して、『世界共和国へ』は世界の来るべき在り方を言及した本だ。新たな交換様式に基づくアソシエーションの実現を提唱し希望を述べている。カントの「世界共和国」理念を引き合いに、各国で軍事主権を徐々に国際連合に譲渡するように働きかけ、それによって国際連合を強化・再編成する(「たとえば、日本の憲法第9条における戦争放棄とは、軍事的主権を国際連合に譲渡するものです」)という未来に向けての可能性を語っている。柄谷行人は人類の緊急に解決しなければならない課題は、①戦争、②環境破壊、③経済的格差の3つで、国家と資本を統御しないならば、破局の道をたどるしかないと言う。これは何十年か後の人に向けられた本かもしれない。


不透明で息苦しく不自由になりつつあるいまの時代、限界の思想を克服して、未来に開かれた希望の思想になってほしいものだ。今日は充実した1日であった。