21世紀の出会いー共鳴、ここ・から

aiueokaki2005-05-05

 いま、淡交社から出た『21世紀の出会いー共鳴、ここ・から』(企画・金沢21世紀美術館)を読みはじめたところだ。これが面白く、参考になりそうだ。
 ポール・ヴィリリオ「破滅の進行」をⅠ部の巻頭文にしたり、真ん中辺りに図版ー注目する作家作品フォトを入れたり、3部構成できちんと今後の美術館の在り方やコンセプトが提出されている。芦屋市立美術館問題に見られるように市場万能主義の嵐が吹き荒れ、美術館に対しても「世間」の風当たりが強くなってきた昨今であるが、そういう廃館や民営化の危機に直面したなかで美術館をつくったのだからスゴイ。美術館は過去や現在だけでなく未来を見つめ、人々に方向性を暗示したり提示したりしなければならない、と思っていた昨今だけあって金沢21世紀美術館は注目に値する。

 日常生活のなかに美術を発見し、体験し、創造しようと言うのがまたいい。美術館が日常生活を優先的なうたい文句にして建てられたのは珍しくて新しい。
 「美術は私たちがが生きていく上で不可欠な知識や能力以外の、目に見えない何かを与えてくれます。それはある人にとっては心の豊かさであったり、ある人にとっては創造力や原動力であったり、またある人にとっては適応能力であったりするかもしれません。とくに、頭も体もやわらかい吸収力のある子供たちにとっては、彼らが成長し社会を築き上げていく上で鍵となる感性を養う大切な源なのです」
 「作品を貴重品として守るだけの威厳のある建物ではなく、子供から大人まで家族全委員が違和感なく美術に」親しみ、生活の一部として見て聞いて触って感じて過ごせる場、何となく人の集まる生活空間となることです」(蓑豊)
 不安で不透明な21世紀初頭にあって、この金沢21世紀美術館に見られるように、未来に向けて現代アートの果たす役割は大きいと思う。時代をつくっていく可能性を秘めている。